コレサワという「戦い方」①
手痛い失恋をしたことがある。
若気の至りと一言で片づけることもできるけれど、当時の私にとっては生きる意味を失うほどだった。長い時間が経った今、その失恋があったからこそ、今の私がいるといっても過言ではない。
だからこそ、コレサワというシンガーソングライターとの出会いは衝撃的だった。
『SSW』という彼女の代表曲とPVは特に。
コレサワに出会うためには、あの失恋は必要だったとすら思えた。
彼女の書く歌詞は決してすべてがポジティブではない。
歌詞のあちこちに皮肉と悲しみが散りばめられている。
それは「会えない」とか「告りたいのに告れない」とかドキドキに展開しそうな容易な歌詞ではない。
ひとりの人間として愛される権利を歌い、
「わたしはわたしでいたい」という根本的な希求に迫っている曲が多いのだ。
だからこそ、失恋して生きる意味を失っていた私に、なんとも可愛い歌声とメロディで一筋の光をもたらした。
コレサワの曲のなかであまりに真理をつきすぎて戦慄すら覚えた歌詞がある。
自分のこと 大切にできていないのに
誰かに愛されるわけがないでしょう(『いたい いたい』より)
「はいはいはいはい!
私は彼の思考に沿って自分を大いに変える人間ですわwwww」と、
泣きながらワロタ。
恋愛をすると自然と自分の本性が出てしまう。
醜い自分に出会い、消えてしまいたくなる。
自分を大切にしていないと、相手に大切にされないし、
相手の価値観の違いを、突き付けられる。
自尊心の低さが露呈されるし、
恋情だけではどうにもならない人間の心の脆さに打ちのめされる。
コレサワが書くのは、恋愛を通じて現れる真の自分との格闘だ。
誰かを好きになることも勿論大切だけれど、
そこから自分がどのように成長して、どのように変わっていくか。
一瞬一瞬に彼女は意味を見出し、真摯に向き合っているから、他のラブソングと一線を画すのだ。
以前、テレビで大学生の相談事をテーマに「誰かと付き合って自分のなかのルールが変わってしまうのが嫌」と言っている人がいた。
それに対して、相談相手の滝澤カレンさんは、
「相手を通して変わるから恋愛は素晴らしい。変わらなくていいなら恋愛をしなくてもいいんじゃないですか?」と言っていた。
なるほど、恋愛には、自分が変わる大きな覚悟が必要だ。
コレサワはきっといつもこの覚悟に真剣だ。向き合っている。命を懸けている。
私は、あの恋に傷だらけになっても命を懸けていたから、彼女の曲に励まされたのだ。
上に述べた『SSW』という曲では、昔付き合っていた彼氏に対しての未練と思慕を糧に前を向く心情を、ナナメな視点から歌っている。
そうよあたしはシンガーソングライター
君に話してた夢が一つ叶ったんだよってどうにか伝えたいから
いまここで夢を歌うわ
この声が探してる 君にまでと届くといいな (『SSW』より)
コレサワは決して、元カレを責めない。
なぜなら、自分と関わったひとへの深い愛が、振られた悲しみを凌いでいるからだ。
『SSW』のPVで失恋の痛みのナイフが、最後ギターに変わる場面には、
涙すら出る。
(コレサワ~~~~~~~!!!!!!と私が叫ぶならばこの瞬間と決めている。)
コレサワの曲で励まされた私も、
これから励まされるあなたもきっと、
恋をすることより更に果て、「愛すること」へ足を踏み込んでいるんじゃないかな。
いくらでも「好き」なんて言えるけれど、恋愛の枠はそれだけでは収まらない。
命をかけた真剣勝負に挑んだ者だけが辿り着く、生きた証がコレサワの歌には詰まっている。
恋せよ、乙女。