真ん中通るは中央線
椎名林檎さんのファンなのですが、彼女の作品の中に『メロウ』という曲があります。
PVも儚げで虚ろげ。
ベースやギターの音も最高。
でも私が一番この曲に惹かれたのは詞の冒頭。
「橙色は止まらない 黄色を探して乗り込め」
という歌詞です。
東京に住んでいる人ならこれらの色が指す電車を知っているはずです。
橙色=中央線
黄色=総武線
を示しているようです。
この曲に出会う数年前、私はこの電車をよく使っていました。特に後者の方。
「オレンジじゃなくて、黄色に乗るんだよ!」と何回も言われて着いた駅。
中央線が止まるのは主要駅。
黄色が止まるのは主要駅と非・主要駅。
非・主要駅に住んでいた人がいて、その人に会いに何度も黄色い電車に乗っていました。
お世辞にも綺麗とは言えない駅だったけれど、夕方も夜中もビルの光が綺麗に反射するためだけにあるようなその駅は、今日も存在していて、その駅に住んでいた人も今日もどこかに存在していて、私はその人に
「オレンジじゃなくて、黄色に乗るんだよ!」って
もう一回言ってもらいたかったりする。
オレンジの電車を降りて遠回りしてその駅まで歩くこともあって、その道もお世辞にも綺麗とは言えないような小道だったけれど、
私にとっては世界一の小道だったりする。
「オレンジじゃなくて、黄色に乗るんだよ!」ってもう一度電話越しに聴きたいなぁ。
その人はそんなこと言ったことすら忘れちゃったりしてそうだけど。
林檎嬢が代弁してくれているから私は、笑顔で黄色い電車を見過ごせているけれど。
生きているうちにそんな駅や電車が一つくらいあってもいいじゃない。